葵(あふひ)の素敵なめぐり逢い

世界文化遺産上賀茂神社で葵を育て文化を伝承する葵の講師「高瀬川薫子」の活動

あたりまえなことがあたりまえでなくなる日 

雪の中、静かに出番を待つ葵
( 葵は「あふひ」と書き 「ひ=神様・大切なもの」 に 「逢う」の意)

上賀茂神社葵祭に飾る葵を育てるようになって5年たった。父の後を引き継いだ家の葵も元気に育っている。
葵のことが気になって、心惹かれたのが始まり。なにごとも好きにならないと力も入いらないし続かない。

葵は昔はあたりまえに広がっていた草だったが今では手入れをしないと容易には育たない。葵に惹かれ、育て始め、地味でめだたない草だけれど、身近な草を大切にすることを覚えた。それと同時に葵の圧倒的な神秘性に導かれ、多くの出逢いが訪れた。
周りの草をぬき、水をやり。そんな日々がくりかえされる。
もう話すこともできないが父の口癖はきょうも草ひきを2時間した。今日は雨がふるから水はやらなくていいかな。などと自然に根差した生活だったんだなと思う。ふんふん。御苦労さまとあまり気のない返事でその当時はうなずいていたけれど。

年明けにイギリスのガーデンデザイナー「ポール・スミザー」氏の番組が再放送すると教えてくれた人がいた。イングリッシュガーデンの話かな。と思ってみていると、なんと日本のどこにでもある草木で庭園を造るというものだった。大事なものは足元にある。という考えである。英国の人に日本人が指導を受け、日本の古来の草木を植えている光景は少し頭をかかえたが、わたしたちと同じような取り組みをしている人が他にもいることを知り歓びとなった。

上賀茂に伝わる神話がある。神様はおっしゃった。境内に広がる葵を飾りお祭りをせよ。そうすれば私(神)に逢えると。神様は何も特別なことをおっしゃったのではなく、足元にある身近な自然を大切にしなさい。とおしえてくださっていたのかもしれません。

あたりまえのことがあたりまえでなくなる前に取り組みたい。