葵(あふひ)の素敵なめぐり逢い

世界文化遺産上賀茂神社で葵を育て文化を伝承する葵の講師「高瀬川薫子」の活動

 「月刊京都」掲載記事より

「月刊京都」2012年5月号 NO。730号 掲載記事より
京を創る人びと 巻頭特集 「葵文化サロン」主宰
世界遺産上賀茂の森再生と葵文化サロン 写真・文 高瀬川


月刊京都掲載記事.pdf 直
二葉葵が芽吹きだすと父の思い出が甦る。父は庭一面に葵を育てていた。
昨年は葵祭にも使っていただき、たいそう喜んでいた。
 五月十五日、「葵祭」。欽明天皇の時代から約千四百年も変わらぬ姿で受け継がれている伝統祭事。
祭りには一万枚もの葵が飾られる。
 葵は遠い昔「あふひ」と書かれていた。「ひ」とは神や尊いモノを表し 
「ひ」に「あふ(会う)」という意 味がある。かつては神社の境内一面
にひろがり身近にあった葵の姿を近年みかけなくなった。
 上賀茂神社の境内に「葵の森」を再生しようというのが「葵プロジェクト」である。「葵プロジェクト」は森の再生だけではない。その過程で文化や歴史を学び次世代に継承するサイクルを創りだす。活動を通じて多くの人とめぐり会い、それぞれの大切なモノは何かを考える。
 今まさにわたしたちは、日本人のこころを取り戻し、一つとなるときだと思う。
この小さな葵。なにげないどこにでもあった植物を通して 美しい日本の自然を愛しみ、時として畏敬の念を抱き、大切に守り続けることこそ日本人のこころの再生につながるのではないかと思う。
 「葵文化サロン」は 葵が結び、人が集い、文化を語る。
神社に足を運んでいただき、境内の木々や草花を愛で、小川のせせらぎに耳をすまし、
日常の穢れ(気枯れ)が、清められるのを感じてほしい。
 一千年以上に亘って変わらぬ佇まいは、再生を繰り返す事によって守られてきた。
ここには永遠の時間がある。そして、遠い昔から日本人が大切にしてきたモノに気づ
かせてくれる。
 サロンの輪が少しづつ広がることを期待している。